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メダカだって、金魚だってかまわない
ジリジリの炎天下、舳先に陣取ってもう随分になるのに朝から当たりひとつこないのは一体どうしたわけだろう。ただ、誰も釣れていないのだから私の腕が悪いのではないはずだ。傍らの釣仙人も手持ちぷさた。ポケット瓶の自家製ガラナ酒をちぴりちびりとやっていたが、「ああ、そうだった。きょうはまだ河の神様に御神酒をあげるのを忘れていた」と瓶をかたむけて中身を少しこぼした。「そうそう、これを齧るとぽくには運がつくの」と、こんどはニンニクをなまで齧りだした。でも、霊験らしきものはいっこうに現れない。
お前なんかが釣ろうとするから釣れないんだ、と声には出さないが、周囲からの冷ややかな沈黙の抑圧がかかる。もうツクナレでなくてもいい、ピラニアでも、吸い付きナマズでも、金魚だってかまわない。どうか、なんとか魚のかたちをしたものがかかってください。析りもむなしく、2日目は誰もなにも釣れずに終わってしまった。
仙人の怖いものは山の神
、日焼けと岐れでぐったりしながら、昨夜のパラックに戻ってくると、かの仙人は洗面道具を持って河におりていく。足を投げ出して腹まで水につかると、ゆうゆうと歯を磨き、髭まで剃りだしたではないか。なんでいまごろ?もう荷物をまとめて帰るというのに、いったい何ごとかしら。
「帰ったら、まっすぐデートにでも出かけるんですか」「ぶぶぶ、あのね、このまま帰るとうちの奥さんが「またあなたは、釣りにいくと顔も洗わずに夢中になって、汚い』と怒るのよ」はは一ん、仙人といえどもやっばり山の神は怖いんですね。大漁のお土産でも持って帰れば、言い訳もできるでしょうが、きょうは何にもないしおおいに気をつかっているらしい。
私も獲物を手にした興奮と感教をご報告したかったのだが残念だ。でも、釣りのシーズンはまだ始まったばかり、水の引きもまだ不十分だ。次回も何と言われようと、絶対ムリヤリついてくる。この手でツクナレを釣るまでは諦めないぞ!
意気込みだけで終わった今年の分まで来年こそは頑張るぞと、竿とリールもへそくりで買いこんだ私。このシリーズ、好評、不評にかかわらず来シーズンに続きます。
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