コンタ君
前の手紙をうっかり、船便の貨物に入れてしまった。その次の日に、キミからまた2通手紙が来ました。前の手紙をそのまま航空便にいれて、追加にこの手紙を書きます。
中国にいることにした、というのは正解だと思います。旅行をするのはいい。中国は広いから、西にも北にも南にも、無限の可能性が広がっています。私はうらやましい。これから4年間の間にどれだけ見て回れるか楽しみですね。
ところで、ひとつ、うちの財政事情をお話しておいたほうがいいな。
おかあさんも、わたしもあまりケチケチしないでつかっちゃうほうなので、今、家には貯金というのは、ろくにありません。わずかなそれも全部定期預金になって、おろすのには解約しないといけない、とかまだ定額に達していないからおろせないとかです。このお金は、誰かが病気をしたり、事故があったときの非常用にもなるお金です。
ほかに、ボーナスは来年前期のファミ平の授業料分50万円と、もし、ちゃんが、大学に入ったら、入学金と初年度授業料で140万円ぐらいかかるそうです。東大か、それより難しいぐらいの大学ですから、ネコちゃんといえども、どうなるかわからないけど、たとえ入らなかったとしてもやはりお金はかかるわけです。だからネコが合格したら、会社から50万円ぐらいは借金しないとたりない。ですから、今年の暮れのボーナスはボクへの配給もゼロ。このほかに、ボクの月給から、毎月ファミ平には10万円を送金しています。彼は家賃に45000円を払うと、結構大変なようですが、「水を飲むとみじめだから、お茶をのむようにしている」とか「おばあちゃんから鶏がまるごと1羽来て、夢かとおもった、ホネは鶏殻のスープがとれるから楽しみだ」とか言って頑張っているようです。
来年はまあ、ネコちゃんが大学に入ったならば(ICUなら自宅から通えるけど、KFCだと下宿になるでしょうね)また10万円かかるでしょう。最低でも。ボクのかせぎは悪い方ではなくて、実収入が毎月5、60万円あるんだけど今でも、毎月赤字なんだな。
ボクは車も持たないし、ゴルフもつき合い酒ものまないし、パチンコもしないし、背広も買わないけど、まあ、パソコン通信と本ぐらいしか道楽のない人なんですけどね。実は、同封した前の手紙にはカッコよく書いたけど、本当は「老後に備える」どころではない。本当は今から、10年ぐらいの間に、僕たちはできるだけ貯金をしないといけないのですけど・・・残念ながらいままでたいしてしてこなかった。そのことは特に後悔してないのですけど。
きみらに言ってもしょうがないから、こんな話をあまりしたことはないけれども、まあ、実状はこんなもの。こんなことをわざわざ書いたのは、ひょっとして、キミはうちがカネモチだと思ってないかなあ、と心配だからです。多分、留学生楼にいる学生のなかではひときわカネのない実家から行ってるとおもうよ。
キミの言うとおり、中国の物価が結構高かった、というのは沿岸部のそれも上海の近くの経済圏だから当然だとおもいます。北京とならんで一番高いところではないかな。これからもすごい勢いであがるとおもいます。そこの美大ともなれば、相当お金もかかるでしょう。ただ、こちらも、正直に言って、キミの学費と宿舎代、最低限の食費を支援するので手一杯です。
円はどんどん下がっています。いま1ドル127円かな。日本の株価はもうすぐ、いや明日にも日経平均で15000円を割り込むでしょう。そうなると首相は替わるだろうね。銀行も倒産するだろうし、ゼネコンも、ということになって本当に不景気が来そうです。4年先の日本なんてどうなってるかわからない。就職先なんてまあ、激変してるだろう。そのような時代がキミを待ち受けている、ということを承知して、計画、予算を計算してみてください。あと何年で世の中にでて自分がやっていけて、その場合、いくらぐらいなら返済できるのか、ということをよく考えて。どのくらいなら融資できるかこっちも真剣に考慮します。
幸い、中国ですから、庶民の平均所得はまだ低いです。本当に言葉ができたら、その倍、つまり2万円ぐらいで生活できるはずです(だって、その庶民は月給1万円ちょいで、ボク同様、一家を養っているんだもの)。日本にいるときと同じ生活レベルで暮らそう、なんておもわないほうがいい。ボクは旅行中も、会社からカイロにいったときも、シャツは3枚、ズボンは3本。パンツも3枚(^o^) 別になんの不自由もなかった。食べ物は、カイロで一番安い「コシャリ」を食べていたら、向かいでコジキがおなじものをくっていた。翌日、彼が町で座って私に笑いかけてきて、まいったなあ。
キミの話を読んでいると、留学生というのは、一般の中国人とくらべて、かなりよい生活をしている人たちではないですか?それが「当たり前」になってしまうと、せっかく中国にいるのに、かっての「租界」(中国を植民地にした欧米、日本が中国の中に、「中国人はいるべからず」という地域を作って自分たちが住んだ場所)みたいなことになってやしないか、と気になります。つまり快適だけど、外人留学生租界。だとしたら、ずっとそこに住むのはちょっと考えものです。
アドバイスとしては、楽しい環境は外でも自分で作り出せるかも知れない。「交際費」なんて余計なものがあまりかかるようならそこをでて下宿をさがすとかするのもいいかもしれません。なに、いっぱいあると思いますよ、その気になれば。ただこちらは中国の学校制度をよく知らないから、そおいうことが許されるかどうかは私にはわからないがね。
それがだめでも、これだけは言えるのは、中国語がうまくなればなるほど、滞在費、旅行費、食費、その他あらゆる費用が安くなる。もっとお金のかからない学校もあるかもしれないし、学校へいかなくても絵の先生の弟子になるとかの道もあるかもしれない。アルバイトもあるかもしれない。旅行をしても「旅社」にとまれれば、劇的にやすいですし。(地方にいけばもう100円とかでも泊まれる。交通は、中国製の自転車で中国中を旅行すればいい。そんな中国青年に2人、あいましたよ)
このような可能性は、すべて語学がどれだけできるか、が大前提になってますね。台湾から来た人は中国語ができるから楽みたいだけど、キミは堂々と「中国語がおれはできる」と言えるようになったときに、今度は「日本語ができる」ことも能力としてやくにたつようになるから、これは互角なんですよ。(ただ、日本語は、もっと漢字とかが間違いなく、きれいに書けないと就職に使うのは無理だなあ)
そのために役立つならと、昨日、キミの希望の中国語の本を探してきました。「実践だけだと、将来のびない」のは実にいいことに気がつきましたね。日本に外国語がはいってきたとき、「ワイシャツ」とかの言葉が横浜の洗濯屋で生まれたように、すぐしゃべれるようになったのは、存外下層階級とかでも実際に外人と接する人々だったんです。いまでもバリ島のみやげものやの子どもは、10歳ぐらいでも英語をしゃべる。けれども、それはそれだけのことで、「語学」なんてものではないんですね。やはり勉強を基本からしていないと、ビルと同じで、土台がないから、いつまでもホッ立てゴヤみたいなもので、上に高くはならない。
これらの本はちょっと私も読んだけど、なるほど、眼からウロコが何枚か落ちたいいほんです。船便で送ってそちらに着く本よりいいとおもうのでこれを最大限生かしてください。
キミにはいろいろな才能がまだ眠っています。他人をたよらず、まあ、親もあまり頼らず、一人で旅ができるようになる過程でどんどんその才能が芽をだすことを祈っています。人生の旅はキミ一人で歩いていくことに、やがてはなるのですからそのウデを中国で、ビンボーを楽しみながら磨いてください。ウデがあがると、どんどん眼からウロコが落ちますよ。
ではでは。健闘をいのるぞ オヤジより
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